同窓会の掲示板

同窓生からのメッセージ

野外保育で育む「生きる力」

上田15回生 依田敬子[NPO法人 響育の山里くじら雲 代表]

依田敬子さん  13年間の公立・私立保育園での保育士経験を経て、2002年より3年間「野外保育 森の子」(安曇野市穂高)で保育者として活動。
  森の子の設立から運営に関する多くの経験を基に、2006年に長野県コモンズ新産業創出事業により「NPO法人 響育の山里くじら雲」を設立。依田さんの故郷、安曇野市明科にある自然豊かな押野山の民家を拠点に、子も親も保育者も共に育ちあうことができる新しいスタイルの幼児教育の場を提供している。
  既存の枠にとらわれないスタイルが全国的にも注目を集め、2008年11月にはフジテレビ系「とくダネ!」、2009年4月にはテレビ朝日「発見!人間力」でその活動が放映されるなど多くのメディアでその活動が紹介されている。

臨床育児・保育研究会 会員、日本野外生活推進協会「ムッレリーダー養成講座」講師

NPO法人 響育の山里くじら雲のご紹介

〒399-7104 長野県安曇野市明科七貴6695-2
TEL/FAX:0263-62-6337
http://www7a.biglobe.ne.jp/~kujiragumo/
NPO法人 響育の山里くじら雲
教育理念「自分の生きる力を育む」
教育目標1.自然に対する畏敬の念を持つ
2.一人ひとりが輝いて過ごす
3.人と人がつながる喜びを感じる
定員15〜20名(保育士2名)



  県内のいろいろな公・私立保育園での経験の中で、共感できることもあれば、こうした方がいいのではないかということもあり、そのような中で自分が理想とする保育が日に日にはっきりと見えてきました。
  保育士になって13年目の秋、ブラジルをひと月ほど旅しました。その時に世界最大の湿原パンタナールを訪れました。360度100km先まで見渡せる広々とした景色、木登りしやすそうなマンゴーの木。そのような風景に身を置くうちに、何となく、こういうところに保育園を作ったらいいなぁと考えました。

森を歩く   帰国後まもなく、週に1回親子で安曇野の森を散歩する未就園児のグループに出会いました。そこに集っていた母親たちは「これから先も子どもたちにはこの森の中で育ってほしい」「デンマークの森の幼稚園みたいな幼稚園を作りたい」といって「野外保育 森の子」を設立し、私も保育者になるお誘いを受け、野外保育に携わるようになりました。
  私は初めから野外保育をやろうと思っていた訳ではなく、理想の保育を実現したいと考えていった結果が野外保育という形になったという感じです。

  「野外保育」というカテゴリー、概念は正式に存在する訳ではありません。また、野外保育は保育者によって内容が異なり、保育時間も保育日数も保育料もちがいます。あえて共通点をあげると、野外で活動していること、少人数・異年齢の集団で保育者が子どもの個々の思いにより添っていることです。野外保育の拠点の数だけ野外保育の形があると言えるでしょう。

くじら雲の一日

山を歩く子どもたち   くじら雲まで歩く日は到着時間が様々です。到着までに早くて1時間、2〜3時間かかる時もあります。到着せず、山の中で1日過ごすこともあります。到着した時点で朝の会をします。料理をする日などくじら雲に集合する日は登園してすぐに朝の会をします。
  週の活動は季節や子どもたちの様子によって変更します。色水遊びや洗濯ごっこはにじみ絵の後に楽しむことが多くあります。ままごとや木工は日常的に行われています。
  その季節ならではの経験ができるようにと願って環境構成、援助、計画を行っています。夏は虫捕りをしたり、川遊びをしたり、秋は1日中拠点以外で過ごす遠出が多かったり、冬は雪遊びをしたり、羊毛で何かを作ったりもします。少人数で活動しているので、1年を通じて子ども主体の活動をしたいと願っています。

森の中で絵本を読む
  日常的にたき火ができること、地域で活動しているので地域の人々とのかかわりが持て、いろいろな人とコミュニケーションが持てること・・・。そのようなところがくじら雲の魅力ではないかと思っています。もちろん、野外でも歌を歌ったり、絵を描いたり、楽器を演奏したり、絵本を見たり、折り紙をしたり・・・そのようなことは一般の保育園などと同様に行っています。

  屋外での活動中に雨が降ってきたら、レインコートを着て活動します。野外保育園がたくさんあるスウェーデンでは「天気の悪い日はない。服装が悪いだけだ。」と言われています。しかし、落雷の危険がある時や昼食時は拠点である建物の中で過ごします。建物は悪天候時の避難場所として確保してありますが、生活の拠点でもあります。昔ながらの農家を改築した建物なので使い勝手がよく、寒い時は薪ストーブのある土間で昼食を食べる子や木工をする子がいます。また、縁側に腰かけて休んでいる大人に絵本を持って行って読んでもらう子もいます。

みんなでおままごと   くじら雲の子どもたちは、野外での活動を通じて、腹筋・背筋などの筋力、持久力、集中力など体力面、精神面が大きく成長していきます。その他にもコミュニケーション力の成長に目覚しいものがあります。
  何か問題が起こった時に話し合いによって解決したり、自分の考えや思いを伝えたり、相手の考えや思いに耳を傾け、理解しようとする力が育っていると思います。また、周りの状況を理解し、自分の判断で行動できるようになると思います。体を動かすことを厭わず、探究心も豊かなように感じます。

稲刈り体験   くじら雲の中では、できるだけ自給自足生活ができるように工夫しています。物が少ない分、人のつながりに助けられて活動しています。例えば、料理や暖房には焚火や薪ストーブを使います。その薪は子どもたちの父母や祖父母、ご近所の方の協力で作られたものです。また、子どもたちが料理で使う野菜や米の無農薬栽培や山道の整備なども同じように協力していただき行っています。子どもたちにはそういう大人たちの姿の中で育ってほしいと願っています。




  保護者の皆さんには、特別な参観日は設けずにいつでも参加したい時にくじら雲に参加していただいています。子どもたちの普段の姿を見てもらえるので、子どもの育ちなどの話を保護者にしても共通理解がしやすいと思います。また、保護者が自分の子ども以外のいろいろな子どもとも関わるので、子どもを見る視野が広がり、心に余裕が持てるようになります。
お誕生日会 保護者は保育者や他の保護者の子どもへの関わりに触れ自分で学んでいきます。保育者もいろいろな保護者の子どもへの関わりに触れ、学んでいけます。保護者間のつながり、保護者と保育者の信頼関係も築きやすいと思います。保護者は保育者に協力的です。保護者同士で助け合う姿も見られます。


いろりのお誕生日会   子どもたちの楽しみのひとつでもある誕生日会ですが、くじら雲ではひとりひとりその子の誕生日に誕生日会を行っています。
  事前に保護者にその子が生まれる前からこれまでについてインタビューし、誕生日会の中でその子の物語を語ります。そうすることで、その子が周りの人にとって大切な存在であることが再認識されます。
  ひとりひとりの誕生日はくじら雲で一番大切な日です。その日1日は朝からその子をお祝いするためにみんなで過ごすのです。

  くじら雲は定員が20名ですが、現在は入園希望者が増えて定員をオーバーしているところです。活動していくには20名ほどの集団がいいと考えています。別の拠点を用意できたらいいのですが、スタッフの育成や場所の準備資金が間に合わない状況です。研修生を受け入れたり、近隣の園と協力の方法などを模索し、活動がより発展するように日々努力を重ねています。

集い   お子さんをお持ちの皆さんへのメッセージとしては、現在の社会においては夫婦だけで子育てをすることは大変ですから、周りの人たちと昔の長屋風なお付き合いができ、家の外も家のように安心できる地域作りができるといいですねとお伝えしたいと思います。
  子どもたちと一緒に自然の中で過ごすと楽しいし、家事も一緒にできると良い経験になると思います。例えば食事作りも全部やらせるのは大変ですので、子どもが興味を持って集中する30分ぐらいを携わらせてあげるなど、大人も無理せず子どもと楽しく過ごせる工夫が日常のなかに取り入れられるといいですね。

  子どもたちは大人をモデルに育ちますから、大人もぜひいい人生を歩んでいきたいものですね。

依田敬子さん 上田15回生・幼児教育科卒業

いろりの集い 主な活動(2009年9月現在):
○著作物
「子どもの育ちと環境〜現場からの10の提言」(ひとなる書房・2008.5)[分担執筆]
「現代の保育」60号・実践報告(ひとなる書房 2004) ほか

○発表
「第3回日本子ども育成協議会フォーラム 待機児童解消の保育から未来を育てる保育へ」シンポジウム・シンポジスト(2009.3.1 国立オリンピック記念青少年センター)
「第4回森のようちえん全国交流フォーラムin長野」分科会・ワークショップ発表(2008.11.14〜16 飯綱高原ホテルアルカディア)
「『子どもの育ちと環境』出版記念シンポジウム〜今だからこそ、子どもの育ちと環境を考える〜」話題提供(2008.11.2 杉並区産業商工会館)
「自然の中で育まれる子どもたち〜野外保育スウェーデン視察報告と長野県の取り組み〜」講演(「自主保育サークルみっけ」主催 2008.6.21 飯田市鼎公民館)
「しぜん こども おとな 野外活動シンポジウム/スウェーデンの野外保育・高見幸子さん講演会」主催(2007.12.15 長野県松本文化会館) ほか

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